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Column 2025年10月

11月の幼稚園だより

 “Come here, please!(こっちに来て〜)”
と手を引かれるままに園庭の小山を登っていくと、その男の子は嬉しそうに「この前ね、ここでカマキリを見たんだ!」と教えてくれました。
けれども、いざ行ってみると、そのカマキリの姿は見当たりません。
「この前ね、この前、I saw カマキリ、mantis!」と、目撃現場を指さしながら目を輝かせて話してくれます。
結局その時はカマキリに出会えませんでしたが、彼はすぐに別の場所を指差して「ここ、蜂の穴だよ!」と教えてくれました。
見ると木の幹に蜜で濡れたところがあり、「前にこの中に蜂がいたの!」とのこと。
そんなことがあるのかしら?と覗き込もうとした瞬間、また元気な声で“Come here, come here!”と手を引っ張られ、今度は山を降り始めます。
 
“Spider, spider!”
指さす先には大きな蜘蛛の巣がありました。
“Look at the big one! Oh, two small ones… oh! More spiders!”(見て!大きいのがいるよ!小さいのが2ひき…あ!もっといっぱいいる!)
まるで蜘蛛の集合住宅のような光景に、二人でしゃがみ込んで見入っていると、今度は“Look! Dragonfly! Oh, 1, 2, 3… so many!”(見て!トンボだよ!いっぱいだ!)
蜘蛛の巣の向こうを飛び交うトンボたちが目に入ります。
すると男の子は、トンボが蜘蛛の巣にかからないか心配になったようで、
“Careful, careful!”(気をつけて、気をつけて!)
と一生懸命トンボに声をかけていました。
 
 子どもに手を引かれて園庭を歩くと、自分がいかに「見えていなかったか」に気づかされます。
彼らの目の高さから見える世界には、季節ごとの小さな変化や虫たちの営みが、立体的に広がっています。
大人が想像する以上に、子どもたちはたくさんのことを感じ取り、覚えているのです。
 
 自然の力に心を動かされるその瞬間、子どもたちの内側では、確かに何か豊かなものが育まれている――そう感じる出来事でした。

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