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Column 2024年8月

9月の幼稚園だより


									
 「ねえ、カブトムシ、Stag Beatle 見つけてよ」
外遊び中に、一人の男の子から頼まれました。
夏の日差しが照り付け、蝉の鳴き声が響き渡る園庭。
“OK. Let’s go and look for it.(わかった。探してみよう)”と答えると、二人で木々の間を歩き始めました。
「見つけてよ」と言われても、いったいどこにそんなカッコイイものがいるのか、見当もつきませんが、最初からサジを投げるわけにはいきません。
とにかく何かを見つけようと探しはじめました。
ところが、最初は「ああ!あそこに蝉の抜け殻がある!」と教えてもらっても、“Where?…Where? I can not find it…(え?どこ、どこ?見えないんだけど、、、?)” という調子で、私の目には何も見えないのです。
「ほら、ここから見て。ぼくの真上だよ」とその子に言われて、ようやく見つける事ができました。まったく頼りにならない先生です。
 
 しばらく後、少しづつ目が慣れてきて、木の肌や葉っぱに潜む生き物が、だんだんと見えるようになってきました。
そして、木の幹に一匹の蝉を見つけたのです。
“Oh, cicada! I found a cicada!(あ、蝉みーつけた!)”アブラゼミでした。
自分で見つけたのが嬉しくて満面の笑みでふりむくと、女の子と目が合いました。
“Did you know that a cicada is there?(あそこに蝉がいるって、知ってた?)” と声をかけました。
女の子は静かにこう言ったのです。
“I know.(知ってるよ)”「ああ、そうか、知ってたのか。」と思いながら蝉に目を戻すと、羽の端が破れている蝉だったのです。
“Did you know the wings are broken?(羽が破れてるって知ってた?)”そう言うと、彼女はまた静かに“I know.”と答えました。
そして、蝉は長い間地面の中で過ごし、やっと地上に出てきたら飛べるようになって、一週間ぐらいで死んでしまうと教えてくれました。
「だから、この蝉はもう弱ってるんじゃないかな」彼女がそう呟いた時、アブラゼミがパッと視界から消えました。
「あたしゃ、まだ元気よ!」とでも言っているかのように素早く飛んで行ってしまったのです。
思わず二人で顔を見合わせて大笑い。
 
 木々の間で「何か生き物を見付けるぞ!」と信念を持って探している時、時計が止まっているような感覚でした。
結局その日はカブトムシは見つからず、蝉の抜け殻をいくつかとアブラゼミ数匹を見つけただけでした。
でも、自分の目に見えなかった自然界の細部がだんだんと見えて来たり、アブラゼミの背中をそおっと触らせてもらった感覚は、とても新鮮でした。
 
 “Clean up time! Lunch time!(お片付けだよ〜。ランチの時間だよ〜)”という声が小さく聞こえました。
なるほど。本気で自然を愛し、楽しんでいる時ほど、その声は遠くに聞こえるものだ、と納得した夏でした。

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