Column

11月の幼稚園だより


									
小学一年生で漢字を習った時、「『人』という字は人と人が支え合っている様子を表している」と聞いたのを覚えています。
人は一人では生きていけない、お互いに関わりを持ちながら生きる生命だということです。
人と人が関わりを持つ時、言葉はその基本となるものだと考えます。 
 
KCKに通う子どもたちは、言葉が出る前、言葉が出始める、そして言葉を使いこなすようになる、そんな段階にある、と言えるでしょう。
Caterpillarクラスでは、言葉より行動で気持ちを表現する子も少なくありません。
Cocoon、Butterflyクラスと年齢が上がっていくうちに、英語、または日本語で自分の内面を表現できるようになっていきます。
お返事一つにしても、先生が質問することに、首を縦に振ったり、横に振ったり、傾けたりしているだけの状態から、 “Yes.” “No.” “I don’t know.”などと、言葉で表現できるようになっていきます。
 
先日、Cocoonさんのお友だちとお話していました。
というより、気がついたら、私が一方的に言葉をかけ、そのお友だちは目もあわせず、じっと聞き、うなずいたり、首を左右に振るだけの状態でした。
それもそのはず。
その子が怒られているシーンだったからです。
何を聞いても黙ったまま。
まるでこちらが根を上げるのを待っているかにようにも感じるほどでした。
日本語でも英語でも同じリアクションです。
私は、ふと、「今日は朝ごはん食べてきたの? Did you eat breakfast today?」と聞きました。
こくりとうなずいたその子に、「YesそれともNo?」と聞くと、かすれた声で “Yes”とお返事してくれました。
”Thank you! I’m so glad to hear your voice. What did you eat for breakfast?(ありがとう! 声を聞かせてくれて嬉しいなあ。朝ごはんは何を食べたの?)”と続いて聞きました。
この質問には、ちょっとハードルが高く感じたのか、首を傾げて黙ってしまったので、 “Did you eat bread? Did you eat rice? Did you eat UDON? Did you eat ice cream? Did you eat popcorn?(パン食べたの? ご飯? うどん? アイスクリーム? ポップコーン?)」などと聞いていきました。
一つひとつに明確なお返事がないので、もう一度 “Yes, or No?”と聞いて同じ質問をゆっくりと繰り返します。
アイスクリームやポップコーンあたりになると、声のかすれもとれ、はっきりと “No”というようになっていました。
しばらくそんな調子で本題とは違う話題で問いかけをし、言葉でお返事をしてもらった後、本題に戻ると、言葉少なではありますが、自分がやってしまった過ちを語ってくれました。
私は「あー、そういうことか。ありがとうね。言葉で教えてくれて嬉しいよ。教えてくれてとっても助かった」と身体中をゴシゴシしながら伝えました。
 
同じお友だちが、次の日も私と一対一でお話しする場面がありました。
その日も同じように首の振り方で返事をしようとしましたが、前日より早く、本人が言葉で話そうとつとめはじめました。
そして、その次の日の朝、私は目を疑いました。その子の表情が2、3倍明るいのです。
いつも伏し目がちだったのが、真っ直ぐに私の目を見て、 “Good morning!”と言いながら笑っているのです。
 
言葉を用いて他者と繋がることを覚えると、人はこんなにも喜びを感じ、前向きに生きられるんだ、と教えられた3日間でした。
親子や家族間だと、お互いに察することができてしまうため、指差しや眼差しなど言葉を使わないコミュニケーションで済ませてしまうことも多くあります。
でも、少し丁寧に言葉で関わりを持つように促すると、子どもたちが変わってくるはずです。
日本語でも英語でも「言葉」を使うよう、明るく励まし、そしてたくさん褒めてあげてあげて下さい。
きっと今までとは違う成長を見せてくれるはずです。
 「人」として生きるために必要不可欠な「言葉」を使ったコミュニケーション能力を、ご家庭でも園生活でも大切にし、一緒に育んでいきましょう。

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