Column
9月の幼稚園だより
園庭遊びの時間に地面に這いつくばるようにしていつも虫探しに大忙しのButterflyさんがいます。
手にはバケツやポット。
「何かいるはず」という眼差しで、茂みや水辺、木の幹、落ち葉の下、もちろん空中も、常に生き物の姿を探し求めています。
ある日、彼はバケツを誇らしげに見せてくれました。
中にはあらかじめ入れておいたのか10センチくらいの土が敷いてありました。
その上にセミのぬけ殻が一つ。
――いや待て、ぬけ殻が動いた!
鎌のような前足をゆっくり動かしてプラスチックのバケツの側面を登ってくるではありませんか!
セミの幼虫です。
まるでロボットのようなその動き。
“Oh, no! You need to let him go right now. It’s a cicada’s baby. He came from under the ground. He’s so desperate to go up and hung on the tree, because when it’s time, his back will crack open, and turns into a cicada!
(今すぐ逃してあげなくちゃ! セミの赤ちゃんだよ、これ。土の中から出てきたの。木に登りたくって仕方ないの。登ってじっとしてて、時が来たら背中が割れてセミに変身するんだよ。)”
もちろん、虫博士の彼は、そんな事は説明されなくても知っているはずです。
”OK,OK……”と言いつつなかなか木に戻してあげる気配はなく、相変わらず這いつくばっています。
「もっと他の虫いないかなあ〜」とそのバケツの中に加える虫を探している様子。
こちらはすっかりセミの赤ちゃんに同情し、”Please, let him go, now!(ねえ、今、行かせてあげて!)”と急かしますが、どうも響かないのでヤキモキしてしまいました。
「自然っていうのはね、あなたの都合で動いてるんじゃないんだから、今すぐ羽化が始まっちゃうかもしれないでしょ!」と強く言いたい気持ちをグッと我慢。
その間にも幼虫を見ようとたくさんのお友だちが集まってきました。
その後、担任の先生に聞くと、”When it’s clean up time, he let it go on the tree. He was telling me that it will turn into a cicada later.(お片付けの時間になったら、木に戻してあげてた。後でセミになるんだよって教えてくれた)”との事。
それを聞いてホッと一安心。
彼はセミが羽化するのに最適なタイミングを、自分なりに感じ取っていたのかもしれませんね。